ダナンのローカル・ウィスキー

インタビュー
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シンチャオー皆さんお元気ですかー?グエンです。
ここダナンは既に真夏!毎日昼間は35度以上で肌を突き刺すような太陽の光です。夕方になって日が沈む時間帯になるとやっと外に出る気力が湧いてきます。よく南国の人は働かないと言われますが、あれはある程度本当かと思います。そのように感じさせるのがダナンの夏です。
そんな熱いダナンで今回はとっても熱い起業家へインタービューをさせて頂きました。ダナンでローカル・ウィスキーを製造している起業家のLuanさんです。
それでは暑さに負けずに、今日も元気にいってみよー!

ローカル・ウィスキーとの出会い

このローカルウィスキーとの出会いの場は私が毎晩通っているSound Cafeでした。
棚にいくつかしゃれたボトルの小さなウィスキーのボトルがあったので、Sound Cafeの店長のMr.Vuに聞いてみました。このウィスキーのボトルはとても可愛らしいデザインで、the Local Whiskeyとだけ書かれていて製造会社とかの情報がまったくなかったのです。なので、好奇心旺盛な私は以前からずっと気になっていました。

そして、つい先日Mr.Vuにこのウィスキーに関して聞いたところ、ダナンの地酒ウィスキーだそうです。早速、試しにロックで飲んでみました。すると、これがなかなか面白い!香りがとても良く、私が知っている通常のウィスキーとはどこかが違う。一口飲んだ時には何が違うのかはわかりませんでした。Mr.Vuに聞いたところ、そのウィスキーは米から作っているよ~との事。しかも作っているのはMr.Vuの友人だとか。その日はそれで撤収しました。

私はそのウィスキーの事がどうしても頭から離れず、翌日Mr.Vuに連絡してウィスキーを作っている人を紹介してくれないかとお願いしてみました。すると、即OK!今日お店に呼ぶから来なよ!との事。ベトナム人のこの良い意味でのラフさとスピード感がとても素晴らしいといつも感心しています。これが日本だったら、先ずアポ取りに1、2日はかかるでしょう。ベトナムにいるとスピード感がまったく違うんです。さらに、ダナンは町自体が小さいから同じ町だったらたいていの場所はバイクで20分以内来れるという理由も大きいかと思います。

とにもかくにも私の頭のなかでモヤモヤとしていた疑問を晴らしたいという事でインタビューの日はやってきました。

Mr. Luanとの出会い

早速私はMr. Luanへインタビューを申し込み、彼は快く了承してくれました。私はあらかじめ頭の中で聞く事を整理して書き留めておきました。とはいえ、実際にインタビューの時にはほぼすべて綺麗に頭から消え去り、アドリブで話の流れから質問が湧き上がってきました。(笑) 

Luanさんが来ると早速インタビューのためのカメラ設定を行い、いつもと同じようにティエンちゃんがベトナム語で質問するインタビュー形式となりました。

インタビュー中は常に笑顔が絶えないLuanさん

Luanさんはとても気さくな方で、流暢な英語も話せるので、今回のインタビューはところどころ英語になりました。かえってそれがビデオ編集をやりづらくしてしまいましたが…(笑) Luanさんはこの日のために気を聞かせて新作のバーボンウィスキーを持ってきてくれました。私は前回いただいた可愛らしいボトルを並べて早速インタビューを開始しました。

新作のバーボンウィスキー

ライス・ウィスキーに関して

はい、これが先日飲んだ時に感じた違いでした。
実は、このウィスキーは麦からではなくから出来ていたのです!言われるまでわからない程の”ウィスキー”の香りとテーストでした。話を聞いたところ、Nep Caiというもち米から作られるそうです。Nep Caiはベトナム中部北部で作られるもち米です。”黄色い花のもち米”と呼ばれています。その理由は、稲が開花すると花粉が黄色で収穫時には、まるで黄色の花が咲いているように見えるそうです。そのように呼ばれていますが、実際に黄色の花が咲くわけではありません。

Nep Cai Hoa Vangの収穫

ベトナムでは、このもち米はお酒としてはワインの材料となります。しかし、残念ながらそのライスワインはベトナムの若者にはまったく人気がありません。私の周りの人たちにも聞いてみましたが、みな知っているけど飲んだことはないとの事でした。恐らく日本でいうどぶろくみたいな存在でしょうか。このお酒はベトナムではライスワインと呼ばれていますが、日本人にとっては感覚的には日本酒です。というのも、アルコール度数は15~45度と高く若干危険な飲み物です。

そして、一般の人にはNep Caiはお酒よりも食べ物としてのもち米として知られているかと思います。よく、屋台の朝食でこのもち米と塩気の強い漬物や肉類と合わせて食べるのが一般的です。ここダナンではバンミー程ではないですが、人気があり屋台で食べれるお店が多数あります。

伝統的なウィスキー製法と独自の熟成プロセス

Luanさんのウィスキー作りの製法は伝統的なウィスキーの製法に従いつつも、彼の独自の製法を取り入れています。Luanさんのウィスキー製法は、樽の中で一度熟成させた後に、ツボに移し替えて地中でさらに熟成させます。これはベトナムの伝統的なお酒つくりの製法と同じだそうです。このように、従来のウィスキー製法に従いながら、独自の熟成プロセスを取り入れています。

ユニークな製法

提携先の蒸留所の樽

独自の熟成プロセスというのは樽で熟成させてから、さらに壺に移して土の中でさらに熟成させるとの事です。そうする事によってアルコールのとげとげしいところ(毒性)がマイルドになるそうです。これは実はベトナムでは古くから作られる製法です。しかし、この手法をウィスキー作りに応用した人はそう多くはないかと思います。この柔軟な発想とチャレンジ精神がベトナム人のすごいところだと思います。

蒸留所とのコラボ

さらに、Luanさんは自前で蒸留所を所有していません。ではどのように作るかというと専門の蒸留所に製造は委託しているのです!ベトナムには蒸留所がたくさんあり、Luanさんのレシピ通りに作ってくれるのです。お酒を造るというプロセスは専門の工程で熟練した技術が必要です。そして、その習得には長い時間がかかるそうです。彼は、レシピを仕様書にして、契約した蒸留所にそれ通りに作ってもらいます。いや~さすがベトナムです。これに似た話はお酒つくり以外でも聞いたことがあります。例えば、衣料製造の工場が稼働していない時間に他の会社から委託されてバックを製造したりというような事が頻繁にあるそうなのです。うまくコラボできれば、まさにWinWinの関係になれると思います。

なので、Luanさんはレシピや製造のための仕様を考え、販売の販路を構築してといった製造以外の作業に時間を費やすことが出来ます。素晴らしいです。

Luanさんの驚きの経歴

今回のインタビューは驚きの連続でしたが、私が最も驚いたのはLuanさんの経歴でした。ウィスキーを作り始めたのはわずか3年ほど前だそうです。その前はどのような仕事をしていたのか聞いたのですが、私は当然お酒の製造にかかわる仕事だとおもっていました。ですが、バイクの修理メカニックですと回答があった時にはもう開いた口がふさがらない状態でした。バイクの修理工からウィスキーを作りへ転向、そしてわずか3年間でこのクオリティーのウィスキーを作ってしまう…本当に驚きです。

ウィスキーを作りは熟成にとても時間がかかります。最低でも2年間は熟成させる必要があるので、今回私が飲めるウィスキーは最低でも今から2年前に作られたもの。なので、今回私が飲んだのは彼が初めてからわずか1年足らずで樽に詰め込んだものです。

しかし、よく話を聞いてみるとバイクの修理工場を経営していた時にもお酒(主にウィスキー)の販売は行っており、お店にお酒を卸売の商売をやっていたとの事です。実はそこには彼の目論見があり、すでその時にはウィスキーを作るビジョンがあったそうです。なので、どのようなルートでどこに売ったらよいのかを研究するためにお酒の販売をやっていたそうです。本当にこの人すごいなーと思います。戦略家です。

将来的なビジネス展開

このインタビューを行ったのは2024/5/20で、この時点では酒造販売のライセンスの発行を待っている状態でした。問題がなければ明日発行されるとの事でした。そして、インタビュー翌日に無事にライセンスが発行され、晴れてディスティラリーとして開業する事ができるようになりました。動画にもあるように私はこのインタビューの前にインターネットで、このウィスキーに関してかなり調べたのですがまったく情報がありませんでした。それもそのはず、まだ正式に販売する事ができなかったからです。

これまでは酒造ライセンスがなかったため、販売せずにMr.Vuのお店でサンプルとして提供したり、知り合いに試飲してもらったりしていたそうです。
Luanさんの目標としては、お酒の味が分かってもらえる人に販売したいとの事です。その第一弾として、まずは外国人の多いMy Anエリアを中心にスーパーマーケットやバーなどに商品を置いてもらう予定だそうです。そして、生産規模を拡大するために、銀行や投資家を呼び込んで自分のビジネスに投資をしてもらって一気に拡大する予定だそうです。

ベトナムでは海外にお酒を輸出するためには別のライセンスが必要です。その書類も既に申請済みで、現在(2024/6/7)認可を待っているとの事です。恐らく数日もすればそのライセンスも発行され、海外にも製品を輸出する事が出来るようになります。ただ、現在生産しているのは600ボトル程度なので、大量に出荷できるのは最短でも今から2年後となるでしょう。その時には投資家の支援もあり、ベトナム初のライス・ウィスキーという事で日本でも頂くことができるようになることを祈っています。

フラグシップ製品(左)新作のバーボン(右)と一緒に

まとめ

今回のローカル・ディスティラリーの記事いかがでしたでしょうか?
私個人的にはとても興味がある話でした。滅多にこのような活動的な起業家に出会う事が無いかとおもいますが、「今日来るから会いに来なよー」みたいな軽い気持ちでさっと会って話をしてくれる、フットワークの軽さが素晴らしいと思いました。

そして、Luanさんのウィスキーづくりに対する思いが半端ないのが、彼の表情や話し方からひしひしと伝わってきます。本当にこの人は自分の好きな事をやっているのだなーと思いました。話している時に常に笑顔が絶えないです。本当に楽しそうに話すのです。私のつたない日本語の文章でうまく表現しきれないのが何ともむず痒いです…。その分写真で想像してください。↓

何とも楽しそうに話してくれるLuanさん


このインタビューシリーズでは他にもダナンの起業家に過去に数名インタビューしていますが、彼ら全員に共通しているのは、目の輝きです。そして、彼らのビジネスの話をしている時には半端ない熱量を感じます。それは今回も同様でした。

今回Luanさんが我々のインタビューに快く応じてくれたのはMr.Vuの紹介というのもあるかと思いますが、Luanさんが言っていたのは自分の作った物を好きになってくれた人なので会いたいと思いました。彼の人としての器の大きさも素晴らしいと思います。

是非YouTubeのインタビュー動画も見ていただければと思います。

そしてコメント欄に感想などいただければ幸いです。

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